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​長崎の被爆樹木

1945年8月9日、長崎市に投下された原子爆弾に耐えて、いまも緑をたたえる約50本が、被爆の実相を伝える木として大切に守られています。

​ここでは、私が訪ねた見学可能な長崎の被爆樹木をご紹介していきます。

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原爆資料館の
​ヒラドツツジとゴヨウマツ

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淵神社の被爆クスノキ

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準備中

​長崎の被爆樹木もまた、広島の被爆樹木と同じく、爆心地に向かってかたむく傾向が確認されているそうです。ふたつの町の被爆樹木を訪ね歩くことで、共通する平和の種が、もっとつながり、ひろがりますよう祈っています。

山王神社の大クス
長崎県長崎市坂本2丁目6

長崎の被爆樹木のなかで最もよく知られているクスノキです。
​2世が各地に植えられています。

平和公園からも徒歩圏内の住宅街、山王神社は爆心地から800メートルの場所にあります。
山王通りの路地を入った石段をのぼって参道へ。てっぺんには「一本柱鳥居」がそびえています。

山王神社への階段 (1)_edited.jpg
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1945年8月9日に投下された原子爆弾で、片側を爆風でもぎとられた鳥居が、

被爆の実相を伝えるために、当時の形のまま残されているのです。

​足元のお供えが絶えない様子から、地元の人々の思いが伝わってきます。
鳥居の先では崩れた片側の破片も展示されていて、被害の大きさがありありと迫ってきます。

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参道を進むと、狛犬とともに出迎えてくれるのが、樹齢600年ともいわれるクスノキです。

原爆の熱に、幹だけをのこして焼け焦げた姿になりながらも、緑の新芽を吹き返し、再生をとげた被爆樹木です。

柱の半分を奪われてしまった鳥居を見た後ではなおさら、その生命力の力強さに感じ入らすにはいられません。

身が引き締まるような凜とした空気に、少し緊張しつつ、境内に足を踏み入れました。

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傷ついてめくれた木肌や大きなうろをさらして、なお高く高く緑の天井をひろげる大樹。

ほかの鳥居が失われたあと、この2本の木そのものが鳥居となって、この地を守ってきたのでしょう。
 

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穏やかに包みこむようでいながら圧倒的な存在感は、とても言葉では表しきれません。
梢を見上げて、ひたすら、風にゆれる葉音に耳をすましました。

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取材当時は3月の早朝でしたが、​つめたい空気の中でも、緑はあざやかでした。
常緑樹のクスノキはきっと、どの季節も豊かな緑をたたえて、語りかけてくれるでしょう。

ぜひこの場に立って、​大クスの語る声なき声に、耳を傾けてみてください。

城山小学校の双子クス
(長崎県長崎市城山町23-1)

爆心地から500メートルに位置する小学校の被爆樹木です。

校内では被爆校舎をいかした平和祈念館や少年平和像、嘉代子桜など、

平和のメッセージを伝える遺跡も多数見ることができます。

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城山小学校は、平和公園から東へ徒歩10分、浦上川をわたった先にあります。

1945年原爆投下を受けた当時、1400人以上の児童や教職員が亡くなった歴史をふまえて、毎月9日に平和祈念式を行われているそうです。「平和は城山から」を合言葉に、平和学習の拠点として見学も積極的に受け入れられているそうで、取材したこの日も、白いハトの舞う門が大きくひらかれていました。

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入口正面、千羽鶴に囲まれた奥に、ハトを腕にのせた少年の平和像が立っています。
原爆ですべてを失った児童が平和を願って立ちあがる姿をかたどったものということです。
​右手には被爆した校舎が児童の発案によって改装されたという平和祈念館があり、見学できます。
館内に残る焼け焦げた木レンガ、原爆落下直後の学校周辺や一本柱になった山王神社の二の鳥居の写真などのほか、かつて校舎の北側で児童に親しまれていた被爆樹木の​カラスザンショウも展示されています。​

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被爆樹木の双子クスは、校舎を抜けて、「平和坂」を下った左手にあります。
仲良くならんで天へ枝をのばす2本は、まさに双子のようですが、もともとは1本の木だったとのこと。爆風に吹き飛ばされて残った根からたくましく伸びた芽が、ふたつにわかれたそうです。生きのびるために選んだすがたと知ると、木の表情もまた、違って見えてきます。

「この双子ぐすは平和坂の下でもう2度と原爆を落とされたくないという思いで今日も立っています」​児童の手書きの説明板によるやさしい解説も添えられています

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校庭では、学徒動員中に被爆して亡くなった女子学生をしのんで植えられた「嘉代子桜」も見ることができます。また、入口の前には永井隆博士ゆかりの桜の植えられた「永井坂」もあります。訪問時はまだ咲いていませんでしたが、ぜひ次回は桜の開花に合わせて訪れたいと思います。

校内の風景ひとつひとつから、小学校全体で「平和の発信」に心をくだいてとりくまれていること、子どもたちのまっすぐな思いがひしひしと伝わってきて、胸がいっぱいになりました。被爆樹木の双子クスはもちろん、手作りの説明板にも注目して歩いてみることで、たくさんの平和の学びに出会える場所です。

被爆クスノキ2世
(長崎市魚の町 5 長崎市役所)

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山王神社の大クスの種から育った2世の苗木は、日本各地に配られ、平和のメッセージを伝えています。

長崎市役所の新しい庁舎の広場でも、2023年3月に植えられた2世の苗木を見ることができます。
まだ支えを必要とするきゃしゃな姿でしたが、しっかり若葉をつけていました。
市電も行き交うにぎやかな場所で、地元の人々に見守られて、若木の成長が健やかでありますように。

Information

長崎市の被爆樹木について、もっと知りたい方は、長崎市の公式サイトへどうぞ。

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